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※サオリ視点で進みます※
クミ「どうしたの?
サインしてくれないの?」
柔らかく笑うこの女が
信じられない
背中に初めて汗がつうっと伝う
ちらっともう一度テーブルに
置かれたままの紙を見る
サオリ(これにあと100万…
そんなの絶対払いたくない)
クミ「仕方ないなぁ…
1分過ぎるごとに
5万ずつアップしていくね?」
サオリ「なっ……やめてよ!」
クミ「書いてくれたら
そんなことしないよ?」
私がすぐに書かないと
わかってるから?
クミ「これ書いてくれたら
私も離婚届にサイン
してあげるよ?」
サオリ「え……」
クミ「離婚してほしいでしょ?
お腹の子の父親にちゃーんと
なって欲しいもんね?」
そう一番長引いてほしくないのがクミとマサユキの夫婦関係
サオリ(離婚してくれるなら
あとは私とマサユキで
何とかなる…?
お金はないけど…マサユキの
実家もそれなりに太いし…)
孫を物欲しげに見ていた
あの義母なら金銭的援助も
多少してくれるかもしれない
クミ「もうすぐ2分経つよー
+10万円だね」
サオリ「書く…書くわよ!
そのカウントやめて!!」
無駄なことをしてクミを
喜ばせるなんて絶対いや!
クミ「日付と場所も書いて」
サオリ「書いたわよ…!
判子は持ってきてないから」
後でなんとでも言えばいい
そんな考えが走ってクミの
間抜けさを笑いそうになると
クミは私の苗字の入った
認印と朱肉を出してきた
クミ「あ、大丈夫
これ使って?」
サオリ(……こいつ最初から
ずっと私に書かせる気で…!)
クミ「あと+10万位
増えちゃうかなぁ?」
固まる私にまたクミが
嫌味を言うので私はそのまま
判子を勢いで押してしまった
クミ「はい…ありがとう
しっかり受け取りましたから」
書いた紙をじっと見て
クミはカバンに入れて
帰ろうと席を立つ
サオリ「ちょっと離婚届は⁉」
クミ「書くよ?
ちゃんと全部の書類出すときに
まとめて書いて提出します」
サオリ「そんなの信じられない
今ここで書いて
出しにいってよ!」
クミ「え?絶対イヤだよ?」
ブリブリしたような言い方が
とにかくムカつく!
サオリ「人にサインさせといて
何言ってんの⁉」
サオリ「こんなの詐欺と
一緒じゃん!」
引き留めようとする私の
数歩先を歩いてクミは振り返る
クミ「サオリって営業職で
仕事ができるって聞いてたけど
もしかしてあれも嘘だった?」
なに?この女は一体なんなの?
クミ「納得できない内容の
書類には簡単にサインしちゃ
ダメなんだよ?」
次回の更新をお待ちください。
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