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本編
13


言葉が詰まっている彼より先に、頭を下げてきたのは結婚式で怒っていたという彼父だった

彼父「この度はうちの愚息が申し訳ないことをした。ミサトさんが怒るのも無理はない…」


私「いえ、非常識なことをしたのは私だと思っています。お父様お母様にはご迷惑をおかけてして、大変申し訳ございませんでした」

私は式場で謝罪した時よりも深く頭を下げた


彼父「君がそこまで、追い詰められたことはわかっている…」


彼母「…私もあなたが非常識とは思えないけど…。そこまでする必要はなかったんじゃないの。さっさと忘れて、自分の幸せだけを考えればよかったのに」


少し同情心を含んだ憐れむような瞳で彼母は私を見る


私「そうですね。そうかもしれないですちゃんと『大人』ができなくてすみません」


ずっと黙ったままの彼は両親が何とかしてくれると思っているのか


彼父「…私たちは君になにも求めないから安心してほしい」


彼父と彼母がこくりと頷き合うのを見て、驚いたのは私だけじゃなかった


彼「えっ…なんで⁉はっきり言ってくれるんじゃなかったのか⁉」


彼父「そんなこと一言も言ってない!身から出た錆だろうが!お前がすべての元凶だ!だらしない息子などいらん!嫁もいらん!」

彼「そんな…っ」

彼母「私もマイコさんとはうまくやっていける気がしないわ…なんだか怖くなってきちゃった。元彼さんの話も相当なものだったし…ほんとに息子の子かもわからないでしょう?そんな人とは家族になりたいと思わないわ」


私「…いいんですか?私は結婚式をつぶしたんですよ?」


彼母「むしろよかったんじゃないかしら?あれほど取り乱したんだから、彼女にやましい事があったんでしょう。ありがとうとは言えないけど…ね」


私「すみません…すみません…」


途方もなく申し訳ない気持ちになる


許してもらえると思ってなかった

味方になってくれるとは思ってなかった


彼母「ただマイコさんと息子が今後どうなるかは2人の判断になるから。そこはわかってちょうだいね」


マイコたちに苦しんでほしい私にそれ以上はなにもするなと、彼の母親に釘を刺される

その言葉を聞いた瞬間憑き物が落ちたような気がした

彼「思い通りになって満足かよ…」


場の空気に納得できず睨みつける彼を、彼母がぱしんと頬を叩く

母「彼女を結婚式に呼んだ時点で、こうならないと思わない方が愚かなのよ」

彼「だって…!」


彼父「もう行くぞ」


彼父に引きずられるように彼が出て行く


彼母がそっと私の耳に顔を近づける


彼母「息子がごめんなさいね。同じ女としては、あなたのスピーチ面白かったわ」


続く

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